「サラダ記念日」という歌集がある。1987年3月、24歳の俵万智が初めて本として世に出した一冊。当時すぐに手にした私が、今も忘れず大切にしているのが次の一句。
♡「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
ストレート勝負の豪速球を受け止める捕手のような気分だったことを覚えている。歳月を経てあらためて読み返しても、その新鮮な刺激に変わりはない。
蛇足ではあるが、「答える人」は「応える人」の方がいい。しかし、きっと彼女は、あえてその文字を選んだのに違いない…などと、懐かしむように呟く自分がいる。